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生物系で博士課程を終了後、就職活動を経て企業就職した30代の女です。 その折には、こちらの掲示板で相談させて頂き、大変お世話になりました。
件の記事ですが、私が就職活動や博士学生生活を通して感じたこととは、少し食い違いがあるように思います。 記事で取り上げられた人は、概ねアカデミックを目指す方ですね。 ノンリサーチのキャリアパスについては、無理そうな仄めかしだけで、あまり触れられていません。 まず職種は何か、と言うのは、博士が企業就職する際には真っ先に突きつけられる大問題であるのに、そこの掘り下げが甘いと思います。
会社勤めをしてみて思うのですが、ストレートで来た課程博士が民間で研究者以外の職に就くことは、決して無理ではありません。 本人が“仕方なく”ではなく本当に“その職で身を立てたい”“プロフェッショナルになりたい”と言う熱意を見せれば、大企業でなくともきちんとした会社や事務所へ入ることは可能だと思います。 問題は、博士たち自身が、研究のために破滅するより食べてゆくために未知の世界に挑んでみよう、と本気で腹を括れるかどうかだと思うのです。
私は、大学では生粋の基礎研究者で、農学・工学系の知識は一切持ち合わせていませんでした。 唯一の自慢は英語力ですが、それもアカデミックではざらにいるレベルです。 それでも私が今、メーカーの社員でいるのは、とにかく何が何でも企業で働きたい、という覚悟で全身全霊を込めて就職活動したからだと思います。
入社して一月半が経った現在、その気持ちは間違っていなかったと思います。 営業でも工場のラインでも、努力次第で博士号は必ず活かせる、と知ったからです。 研究能力だけではありません。 毎日、勤勉に働くこと。問題解決のために頭を使うこと。文書を書き、プレゼンテーションを行うこと。新しい知識に好奇心を持って接し、自発的に学んで吸収していくこと。 全てが、博士課程で培った大事なスキルです。
きちんと博士課程生活を“勤め上げて”きた人間なら、企業に売れる“何か”を必ず持っていると私は思います。 問題は、博士課程の学生自身がその価値と意義を自覚し、上手に売り込んでいくかどうかではないでしょうか。
政策の失敗や企業の理解の不十分さは、もちろん言わずもがなです。 しかし、だからと言って、博士たちは救済の手を待ち続けて人生を終るわけにはいかないのです。 自分の人生を、これからどうしたいのか。企業で研究現場から離れた職に就くことは、自分にとって幸福か不幸か。自分の今の能力は、どういう分野に適切で、どういう分野に不適切か。 全ての博士課程の学生に、自分の能力と適性を今一度真剣に見直して欲しいと思います。 そこそこの満足のいく就職が見つかる人は、決して少なくないはずです。
以前、相談の折に書かせて頂いたこととは、少し考えが変わったかも知れませんが、現在の私の正直な意見です。
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