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ヘルパーとして、それも利用者さんのお宅を訪問して、家事や介護をする仕事に就くなど思ってもみませんでした。前の仕事を辞め、求職中に期間や費用が手ごろという理由で、ホームヘルパー講座を受講しました。講座はさまざまな年齢や立場の方々と一緒で、とても楽しく、また熱心な講師の方々の姿勢に、「こういう仕事もいいかもしれない」と、少し興味をもつようになっていました。
ところが、講座の最後にある特養での施設実習で、現場の人たちから放置され、揚句に「暇そうにしている」と言われました。実習生がしていいこととしてはいけないことの説明もしないで、なぜ嫌味を言われないといけないのか、こういう施設が実習を受け入れるのはおかしいと思い、「福祉の仕事は絶対にしない」と決めました。また同じ時期にガイドヘルパーの講座も受講していて、こちらも担当の職員が受講生に厳しい、というよりとても冷たい態度で接するので、福祉業界にはすっかり幻滅を感じていました。
ガイドヘルパーの養成講座は、わたしのような個人での受講は少数派で、いろいろな事業所の方が受講していました。受講生の間で雑談をしているうちに、「ヘルパー資格を取得するなら、うちの事業所に登録しないか」と熱心に誘われました。その場で断ることもできず、その後、何度も電話をいただき、結局、面接に行くことになり、気がつけば福祉の仕事、それも居宅の仕事に就いていました。
利用者さんのご自宅という私的な領域に入るということに、最初は戸惑いがありました。でも利用者さんがやりにくくなったことをサポートしているにすぎず、当初、想像していた仕事とは、違う印象をもつようになりました。私的な領域に入るということは、利用者さんに受け入れてもらっているということであり、それはむしろ喜ばしいことでした。
最初に利用者さんのご自宅へ行き、活動内容を確認しつつ、ご要望に応えていく―言葉や行動のキャッチボールをしながら、利用者さんに信頼できるヘルパーとして、徐々に受け入れていただいているのではと実感していく過程が、居宅の仕事冥利だと思っています。
ヘルパーが信頼できる存在であればこそ、利用者さんに、ヘルパーが来ることを待ってもらえるのだと思うようになりました。ヘルパーは、家事や介護の「作業」をする人ではなく、利用者さんの心の中に入っていく存在ではないか。ご自宅にいらっしゃるからこそ、見せてくださる穏やかな表情や所作を知っているのは、ご家族以外ではヘルパーだけ。居宅の仕事は奥深く、就いた者にしかわからない喜びがあると思っています。
☆2段落、3段落の悪口を書いたところを、ばっさり削除されてしまいました。 わたしが一番、書きたかったことなのに。
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